光あるところに影がある…
闇の世界に生きる彼ら、
…ナバール盗賊団…
ホークアイ
『よし!オレが行くぜ!
ビル
「どうした、ホークアイ?
さっさといただくものいただいて、フレイムカーン様のところに
戻らなければ、もうすぐ夜が明けてしまうぞ。さあ、急ぐんだ!
ニキータ
「にひひ、今夜はおたからがっぽり!
ここが最後の家だに〜。アニキのテクでちょいちょいっと
かたづけちゃってくださいにゃん。
「ぐーぐー…金は…みんな、わ、わしの。うひ…うひひひ…ぐー
『ふっ、ちょろいもんだぜ。
「ひ!!ど、どろぼー!! わ、わしの金ぇ!!!
『ちっ、おきちまいやがったか。まあ、せっかくだから
いいコト教えといてやるよ。「悪銭身につかず」ってね。
あんた、ずいぶんと悪どいもうけ方してたそうじゃないか。
『でも安心しな。これで、金を巻き上げられる人達の苦しみが
ちっとは身にしみただろ?これからは、あんまり悪どい
商売はするんじゃないぜ!
「キーッ!そんな事ドロボーに言われたかないや!
ホークアイ
『はっはっは、まあ、そうカタイ事
言いなさんなって。じゃあな!
『ひたいに汗して、地道にはたらけよ!
『キーッ!キーッ!!
『さばくのあらし』、人々はナバール盗賊団をそう呼んだ…
彼らは、首領フレイムカーンの下、
人里はなれたさばくの中の要塞を根城にしていた。
ホークアイ
『ただいま戻りました。
フレイムカーン
「…ごくろう…
イザベラ
「おまえ達がいない間に、すでにみなには伝えたが
我がナバール盗賊団は、本日をもって解散し、新しく
フレイムカーン王の統治する、ナバール王国建国をめざす!
「いつまでも、こんな辺境の荒れた土地で、くすぶっている
場合ではない。世界きぼでのマナの変動のえいきょうで、
我々の生命線である、オアシスのわき水がかれ始めている。
「さばくを捨て、新天地に『ナバール王国』をきずくのだ!
まず、北の山岳地帯、風の王国ローラントを占領する。
これから作戦かいぎを開く。おまえ達は休んでいろ。
『……
ジェシカ
「ホークアイ!
戻っていたのね…どうしたの?
『……フレイムカーン様は、いったいどうなされたのだろう?
以前のフレイムカーン様は、盗賊である事をほこりにしていた。
それなのに、こんなにカンタンに盗賊団をやめるだなんて……
『それに、あのイザベラを、命の恩人というだけで、
自分の右うでとして盗賊団の実権をにぎらせている…
いったいどうしちまったんだ!?
ジェシカ
「……パパは、きっとみんなのためを考えて、
そう決めたのだと思うの。井戸の水がかれてしまったら、
ここで生きて行く事は、むずかしい。だから…
『だから、あれだけきらっていたはずの「王様」になるってか?
はっ!フレイムカーンの名が泣くぜ!オレ達は、貧しい民から
平気で金を巻き上げるような、「王制」を許さなかったはずだ。
ジェシカ
「パパの事を悪く言うのはやめて!
ホークアイ
『おいおい、まさかジェシカまで、「お姫様」に
あこがれちゃってるんじゃないだろうな?
ジェシカ
「!!
『……
「よぉ、ホークアイ。ジェシカが泣きながら走っていったぞ。
クックック、よっニクイね!この女泣かせ!
「異常なーし!
ニキータ
「あ!アニキ!にゃんだかたいへんな事になっとるにー。
オイラ、よわっちくんだから、けんかとか、せんそーとか
にがてなんだな。どーしたらいいんにゃろ…
「戦のじゅんびをせねば!うー、ひさしぶりにもえてきたぜ!
「ローラントにはアマゾネス軍という女だけの軍隊があるってさ!
きっとゴリラみたいなムキムキのやつらに違いねえ!
「いやあローラントのアマゾネス軍ってのは、きっと色っぽい
ネーちゃん達だよ。うへへ、ダガーでつんつんしちゃおかな?
「今、フレイムカーン様とイザベラ殿が、フレイムカーン様の
部屋で、ローラント侵攻の作戦かいぎを開かれている。
「んふふふ、ナバール王国かあ…
そしたらおいらは、ごらくだいじんかなにかになって、
まい日あそんでくらしてやる!
「最近フレイムカーン様は、元気がないご様子だったので
心配していたが、きっとこの事でなやまれていたのかも?
いやぁ、さすがは我らの首領様だ!
「おや、ホークアイ、あんたがここに来るなんて、
めずらしいじゃないのさ?
「我らナバール忍者軍の前には、ローラントアマゾネス軍など
敵ではない!
「あら、ホークアイ、イーグル様が探してたわよ。
「よぉ、ホークアイ。お宝の方はどうだったい?
…ってのも、もう聞けなくなるんだなあ。
ちょっと、さびしいもんだな!
「イーグルなら、そこのドアから表に出て、
かいだんをおりたところの、自分の部屋にいるぜ。
「何だい、ホークアイ?おなかすいたのかい?
残念だったねえ、パーティはもう終わっちまったよ…
「ホークアイ殿、イーグル様が探してましたよ。
「ふーむ、オアシスの井戸がかれた事など、今までに一度も
なかったのに…マナというフシギな力の変動とやらが、
えいきょうしていると、イザベラ殿が言っていたが…
「ローラント城は難攻不落の城として名高い。
あの城さえ手に入れば、そこを足がかりに周辺国も
かんたんに攻め落とせよう。
「最近は、うばってきたお宝を、貧しい人々にくばるのを
やめたから、お宝たまっちゃって、たまっちゃって…
ホラ、右の壁のかくし通路からのぞいてごらん。
ジェシカ
「……
イーグル
「ホークアイ…大事な話があるんだ…
部屋の奥に入ってくれ…
イーグル
「ホークアイ…
ローラント侵攻の件、おまえも聞いただろ?
……最近、どうもオヤジの様子が変だと思わないか?
「…そうか…いや、何でもない。
悪かったな、変な事言って…
イーグル
「だろ?やっぱ、オレ達はガキの頃から兄弟のように
いっしょにそだってきただけに、考える事も同じだな!
イーグル
「…様子がおかしくなったのは…先月、オヤジがさばくで
行方不明になっただろ?あのときにイザベラと出会って、
助けられ、いっしょに戻って来てからの様な気がする…
「オレはどうも、あのイザベラが怪しいと思っている。
もう、ガマンできん!
今日こそアイツの化けの皮をはがしてやる!
「イーグル様が走っていったけど、何かあったの?
「フレイムカーン様に誰も入れるなと、言われていたのですが、
イーグル様が無理矢理、中に入っていってしまいました!
イーグル
「!しーッ!しずかに…
ホークアイ
『!?……
イーグル
「見ろ、オレは向こう側に回り込む!
イザベラ
「……わかった、…様に…ほうこくを…
『そこまでだ!
イーグル
「とうとうシッポをつかんだぜ!
そいつは一体何者なんだ?オヤジに何をした!?
謎の男
「…邪魔がはいったようだな。後はまかせるぞ…
イザベラ
「ふふふ、ボウヤ達、世の中には知らない方が
いい事だってたくさんあるのよ。秘密を知られてしまった以上
フレイムカーンのように、わすれてもらうしかないわね…
イーグル
「くそッ!オヤジを元に戻せ!!
おまえなんか追い出してやる!
イザベラ
「アーッハッハッハ、ばかな子だね!
イーグル
「うわあっ!く、苦しい…
ホークアイ
『イーグル!どうしたんだ!
イーグル
「……うがあ…く、ホークアイ…早く…ニゲ…
イーグル
「………グ…グ…グ……
ホークアイヲ…タオセ……ホークアイヲ…コロセ……
ホークアイ
『イーグル!しっかりしろ!やめるんだ!
イザベラ
「クックック、もう聞こえやしないよ。
さあ、どうする?やらないとやられちゃうよ?
イーグル
「……う…ホークアイ…、今助け…るぞ!
イーグル
「……お、オレはどうなってもかまわん!斬るんだ!
…生きのびて…ジェ…ジェシカを守ってやってくれ!
イザベラ
「ちィッ!まだそんな力が残っていたのか!
こうしてやる!!
イーグル
「……うがぁぁッ!
イーグル
「………………
ホークアイ
『イーグルっ!だいじょうぶか!?
イーグル
「…う、う、ホークアイ、…ありがとう…
イザベラ
「ちッ!みねうちか…こざかしいマネを!
これでも、くらえ!
イーグル
「うおーッ!!!
イザベラ
「ハーッハッハ!
ホークアイ
『イーグル!しっかりするんだ!!
イーグル
「……
ホークアイ
『きさまッ、よくもイーグルを!!
イザベラ
「…クックック、おあそびはここまでよ…
イザベラ
「誰か!誰かおらぬか!!人殺しだ!!
ビル
「どうしたんですか!?
あッ!きさまホークアイ!よくもイーグル様を…
おとなしくしろ!
ホークアイ
『違う!オレじゃない!オレじゃないんだーッ!!
ホークアイ
『くそっ!出しやがれ!!
イザベラ
「仲間殺しの罪は重い!いずれ日をあらためて、
おまえの処刑を行う。それまでそこで、はんせいするがいい!
イザベラ
「ホホホ、おとなしくしてるのよ、ボウヤ。
本当の事を話すと、ジェシカの命は無いよ。
ホークアイ
『きさま!ジェシカに何をした!
イザベラ
「ふふん、ちょっとした呪いのアイテムを
プレゼントしただけよ。あんたさえおとなしくしてれば
何もおこらないわ。ハハハハ。
『くそーっ!出せー!
『……ジェシカ…
ジェシカ
「…うっ、うっ…イーグル兄さんが…
ホークアイ、あなたが兄さんを殺したなんてウソよね!?
あんなに仲が良かったのに、あなたがそんな事するはずがない!
ジェシカ
「教えて、いったい誰が兄さんを!?
ホークアイ
「それは…
(イザベラ:本当の事を話すと、ジェシカの命は無いよ…)
ジェシカ
「どうしたの、ホークアイ!いったい誰が!?
ホークアイ
『………
ジェシカ
「な、何で、だまってるのよ。何とか言って!
…も、もしかして…?!ウソ!そんなのウソよ!
ホークアイが兄さんをだなんて…
『……ジェシカ…
?
ニキータ
「…オイラは、アニキじゃないって信じてますから…
ささ、こんなところに、ながいはむよー、とっとと
ずらかりましょう。このアニャから表に出られますよ!
ニキータ
「はやく、はやく!
ニキータ
「アニキ、ジェシカさんにかけられた呪いのアイテム、
あれは、伝説の『死の首輪』ですにゃ!
「伝説では、身につけると二度とはずす事ができにゃい上に、
呪いをかけたイザベラが死ぬと、いっしょに
死んでしまうんにゃ!!
「聖都ウェンデルにいる光の司祭様なら、にゃにかいい知恵が
あるかも知れにゃい…。アニキ!後の事はオイラにまかせて、
旅立った方がいいにゃ。
ホークアイ
『………
…わかったよ、ニキータ。ありがとう。ジェシカをたのんだぞ!
ニキータ
「……アニキ、お気をつけて…
ジェシカさんの事は、オイラにおまかせくにゃさい!
「脱走だ!ホークアイが脱走したぞ!!
ニキータ
「うっ、うっ、アニキ、みじめな姿になっちまって…
待っててくにゃさい、今お助けしますから…
『…イーグル…我が友よ…
ジェシカは、オレが必ず助けてみせる!
だが、今はあえて旅立たねばならん…
『…友の仇をうつため、そしてジェシカを守るため、
オレは必ず、ここに戻って来る!
…ジェシカ…それまで、どうか無事でいてくれ…
友を失い、ジェシカにかけられた呪いを解くため、
ホークアイは、聖都ウェンデルに向け旅立った…
だが、この時ホークアイは、世界の命運をかけた戦いに
やがて自分が巻き込まれて行く事など、知る由もなかった…
物語は、まだ始まったばかりなのだ…
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