魔法王国アルテナ……
極寒の地にありながら、理の女王の魔法の力によって、
温暖な気候が、たもたれていた
しかしマナの減少にともない、魔法の力がしだいに弱まり、
周囲から少しずつ、氷と寒さが
城内へ侵入し始めている…
紅蓮の魔導師
「しょくん!知っての通り、世界から
魔法のみなもとである、マナの力が消えつつある!
我が魔法王国アルテナにとって、国家の存亡に関わる一大事だ。
「だが、このままだまって滅亡を待つわけにはいかない。
そこで、禁断のマナの聖域へのトビラを開き、
伝説の『マナの剣』を入手するのだ!
……どよどよ、ざわざわ……
「静かに!伝説ではマナの聖域へのトビラは、アルテナをはじめ
各地に点在しているマナストーンをそうさする事により
現れるという…
「マナストーンは、他国でもげんじゅうな
かんし下におかれているはずだ。
当然、他国からのもうれつなていこうが予想される!
「全力をあげて、各国のマナストーンを占領せねばならない。
マナの剣を我が理の女王にささげ、魔法によって
世界を統一し、『魔法帝国』をきずくのだ!
兵士達「女王陛下ばんざーい!アルテナばんざーい!
アンジェラ
『ねえねえ、ホセ! ホセってばー!!
ホセ
「はいはい、そんな大きな声でなくても聞こえております。
こう見えましても、じいはその昔、アルテナにその人ありと
いわれた大魔法使いとして……
アンジェラ
『ストーップ!ホセの武勇伝はもう聞きあきたわ!
それよりも、ほら、昨日の続きを教えてよ。
ホセ
「……姫様。魔法は、格好だけまねれば誰にでも使えるという
モノではないのですじゃ。姫様が未だに魔法を使えないのは、
格好ばかり気にして、かんじんの『心』がともなってないから…
アンジェラ
『ふんだ!お説教ならたくさんよ。
もういい!ホセにはたのまない!べろべろべーだ!
ホセ
「……やれやれ、困ったものじゃ。
ホセ
「おや姫様、やっとやる気になりましたかな?
アンジェラ
『ぜーんぜん!
魔法なんか使えなくたって、別に困んないもーん。
アンジェラ
『じゃあねーん!
ホセ
「……やれやれ、困ったものじゃ。
『あ、ヴィクターだ。 おーい、ヴィクター!
ヴィクター
「あっ、姫様〜!!
魔法のおべんきょうは終わったんですか〜?
ヴィクター
「途中で逃げだされると、後で、
ホセじいのグチを聞かされるのは、いつも
このボクなんですからね〜!かんべんしてくださいよ〜!
アンジェラ…魔法王国アルテナの王女…
父のいないアンジェラは、幼い頃から女王である母親に、
しかられたり、だきしめられたりした事もなく、女王の立場でしか
せっしてくれない母をとてもさびしく思っていた…
子供心に、母は女王として、大変なせきむをはたして
いるからだと、自分自身に言いきかせてはきたが、
さびしくて涙がとまらぬ事もあった…
母の愛情にうえていたアンジェラは、その反動で
よくハデなイタズラやワガママを言っては、
まわりの者を困らせていた…
そんなアンジェラも成長し、母の理の女王ににて、誰もが
みとめる美しさをそなえていたが、王女であるにもかかわらず、
未だに魔法を使いこなす事ができず思いなやんでいた…
「ここは、アルテナ城全体を暖めているボイラー室。
あの炎は、理の女王様の魔力によって、ともされています。
でも、ごらんください。炎があんなに小さく…
(炎が今にも消えそうに、ほそぼそともえている…)
「アンジェラ王女様、ヴィクターが探してましたよ。
「理の女王様のおかげで、アルテナはいつでも、はるのような
暖かさだったのに、寒さで花が枯れ始めています…
女王様は、風邪でもおひきになったのでしょうか?
「アンジェラ様…また、ホセのじゅぎょうを
途中で、抜け出してきましたね?
こんなところでフラフラしてないで、お戻りください!
「アンジェラ様、おはようございます!
兵士
「アンジェラ王女、理の女王様のご命令で、
ここはしばらくの間、閉じております。
どなたも、お通しできません。
「アンジェラ様、お気をつけください!
今、兵士達が、魔法のとっくんをしておりますので…
「……マインドアーップ!!
「……マジックシールドーッ!!
「理の女王様は、零下の雪原にある、氷壁の迷宮に
よくおでかけになられます。氷壁の迷宮には
マナストーンがあると言われています…
「このような極寒の地に、われらが安心してくらせるのも
みんな、理の女王様のおかげです!
「おや、姫様がこんなところに来るとはめずらしい!
一日も早く、女王様の後をつげるような、
りっぱな魔法使いになってくだされ…
「ここアルテナと、東の港町、雪の都エルランドの間の、
零下の雪原に、最近モンスターが異常発生していて、
荷物がなかなかとどかないんです…
「女神像においのりすれば、きろくをほぞんできますよ。
「うーん…うーん…
「紅蓮の魔導師殿による兵士達のくんれんが、
最近とくにはげしくなって、ケガ人もでています。
戦が、近いようですね…
「紅蓮の魔導師殿は、ますます魔力をあげている…
いまや、理の女王様にならぶほどの魔力を
身につけたのではないでしょうか?
ヴィクター
「姫様、こちらにいらっしゃったんですか!
理の女王様と紅蓮の魔導師殿が、お呼びですよ。
ボクは、先にさっきの中庭でお待ちしてますから…
ヴィクター
「早く来てくださいよっ!
「さ、王女様、お急ぎください…
「ハ…ハックション!うー、最近やけに冷えこむのお…
「アンジェラ様、たいへんもうしわけありませんが、
女王様のかいぎが、ながびいておりまして、今しばらく、
どなたも、お通しできません。おまちください…
ヴィクター
「姫様、たいへんですよ!
女王様がいよいよ、海のむこうの草原の国フォルセナに
侵攻を開始するらしいです!さあ、女王様のところへ…
「アンジェラ様、お通りください。
アンジェラ
『…お、お呼びでしょうか、お母様?
紅蓮の魔導師
「アンジェラ、私から説明しよう。
マナの聖域へのトビラを開くため、各地のマナストーンを
占領すべく、各国へ侵攻を開始する事にした!
「伝説では、世界中のマナストーンのエネルギーを解放した時、
マナの聖域へのトビラが開かれるという。手始めに、アルテナに
ある、マナストーンのエネルギーを放出させようと思う。
アンジェラ
『でも、どうやって…?
理の女王
「……術者の生命とひきかえになるため禁じられている、
『封印されし古代魔法』を使うのです…
…しかし、私や紅蓮の魔導師はまだ死ぬわけにはいかない…
「…そこで、おまえの体を触媒として使う事にしました…
おまえの命さえひきかえにすれば、
マナストーンのエネルギーを放出する事ができる…
アンジェラ
『そ、そんなっ!!お、お母様!
理の女王
「…魔法の使えないおまえは王家のハジ…
最後に大魔法を使って名を残せれば、この女王の娘として
ふさわしい散り様… さあ、こっちへ来なさい…
アンジェラ
『…い、いや…いやーっ!!!!!
紅蓮の魔導師
「…消えた…
理の女王
「…
『…う…う〜ん…
…こ、ここは? お城の外…
でも、お母様…なぜ…
『もうお城には、帰れない…
これからどうしたらいいんだろう…
城門はかたく閉ざされている…
アンジェラ
『……寒くて、もう歩けないよ……
『……お城に…お城に戻りたいよ……お母さま…
『…ここは?
「あら、目が覚めたのね?雪原で倒れていたのを見つけて、
ここ、雪の都エルランドに、うちの娘と運んできたのよ。
もう心配いらないから、ゆっくりしていってね。
「チチ!おねえちゃん、目が覚めたわよ!よかったね!
チチ
「わあい!ねえママ、チチこのおねえちゃんとあそびにいく!
「だめよ、迷惑かけちゃ…チチはママがあそんであげるわよ!
チチ
「わあい!
アンジェラ
『……
「うちは子供が一人しかいないから、つい、かほごに
なっちゃうのよ。いけないとは思うんだけど、
どうしてもあまやかしちゃうんだ…
「きゃっきゃっ!ママー、こっちこっち!
「ごはんは、まだかね!!
「ほんとにもう、おばあちゃんたら、
さっき食べたばっかりなのに、何回食べれば
気がすむのかしら…
「ここは、雪の都エルランドの町じゃ。
「町の北の港から、最後の船が出るよ!
「とうとう港の中にまで流氷が入ってきおった。
当分の間、定期船は港に入って来られなくなるじゃろう…
「魔法王国アルテナは、零下の雪原の西方にあります。
「町の南は零下の雪原、最近じゃモンスター達の巣窟じゃ!
「そんなかっこうじゃ外は寒かったろう。
ゆっくり暖まって行きな!
「最後の船が出ると、この町もますますさびしく
なっちまうんだろうなあ…
WANTED!
『アンジェラ王女』 反逆罪で手配中
賞金 10000ルク
「ふぇっふぇっ!王女をつかまえて賞金を取るのはこのワシじゃ!
何せワシャ王女を見た事があるからのう!
たしか、イタズラ好きなちっちゃい女の子だったハズじゃ!
「アルテナ王国の王女をつかまえたら、賞金がでるらしいぜ!
パブの壁に手配書がはってあるよ!王女ってどんなヤツ
なんだろうな?うー、オレがつかまえてやるぜ!
「魔法のうえきばちに種を植えると、すぐに実がなるんだよ!
「おや、おねえちゃん、乗るのかい?乗らないのかい?
まあ、いずれにしても出航まで、もうしばらく時間が
あるから、乗るんだったら後でおいで…
「今度の船が、この港から出る最後の船になる。
乗りおくれるなよ!
「旅の占い師が、この村に来たってきいたから、さっそく
占ってもらいにきたんだけど…むだあしだったよ。
まあ、むだだと思うけど、あんたも見てもらえば?
占いババ
「…人の運命は、99パーセントまで、あらかじめ
決まっておる…じゃが、残り1パーセントに、未来があり、
夢がある…人はその1パーセントをこうよぶ…『希望』と…
アンジェラ
『…ねえ、占い師さん…
私…これから、どうしたらいいの?
占いババ
「…時に人は、その1パーセントの希望さえ
見失いそうになるほど、深い絶望におそわれる事がある…
そんな時は、聖都ウェンデルの光の神殿をおとずれるとよい…
アンジェラ
『…光の神殿?
占いババ
「…暗闇で迷ってしまった時は、
道をてらしてくれる、光が必要じゃ…
ウェンデルにむかえ!
「だめだ、このバーさん。おれにも、ウェンデルがどうとかって
まったく同じ事言ったよ!今度産まれるウチの子が、
男の子か、女の子か、占ってもらおうと思ったのにさ!
アンジェラ
『……聖都ウェンデル、か……
そこで、何が待っているのか、わからない…
……でも…このまま、ここにいるわけにはいかない…
『……行ってみよう…きっと今よりマシなはずよ!
魔法が使えるようになれば、きっといつかお母様も、
私をみとめてくれる…必ず……
理の女王の娘でありながら、女王の愛をうけられず、
なやみ、苦しむアンジェラ…アルテナを追われ、
忍びよる暗殺者の影におびえながら、国を後にする…
だが、この時アンジェラは、世界の命運をかけた戦いに
やがて自分が巻き込まれて行く事など、知る由もなかった…
物語は、まだ始まったばかりなのだ…
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