「……
「おい、デュラン!でばんだぜ!!しっかりな…
「ただ今より剣術大会若手部門、一位決定戦を行う!両者前へ!
ブルーザー
「ふん、お前なんかにゃ負けねえぜ!
「はじめッ!
ブルーザー
「やったぜ!
「待て!ブルーザーのはんそく!デュランの回復をみとめる!
ブルーザー
「ちッ!運のいいヤローだ!
ブルーザー
「うぉおおッ!!…ま、マイッタ!
英雄王
「そこまで!デュランのゆうしょうだ!!
よくやったぞ!ウデをあげたな、デュラン。
ブルーザー
「…うう、…つ、強えぇ!
草原の王国フォルセナの傭兵、デュラン…
父親は英雄王のかつての友人であり、『黄金の騎士』と
しょうされるロキであったが、デュランが幼い頃に
行方不明となる…
母親も病気でなくしてからは、伯母のステラのもとに、
妹のウェンディとともにひきとられた。
父親の思い出は、ほとんどないものの、やはり血は争えず
剣術において、若手の中では右に出る者がないほどのウデで、
フォルセナ国の傭兵として英雄王につかえるようになった……
『ふわぁあ、ねむいなあ…
「もうすぐ交代が来るから、それまでのしんぼうだ。
オレは、ちょっくら、もうひとまわりしてくるよ。
デュラン
『ぱぱ、どこに行くの?
ロキ
「…ドラゴン退治だよ。こんどの敵は、竜帝と呼ばれる、
ドラゴン族の中でも最強のヤツだ。だが、だいじょうぶ。
リチャード王子と私なら、必ず勝てるよ!
ロキ
「デュラン、おまえは男の子だ…
妹のウェンディと母さんをたのむぞ!
デュラン
『ん!いってらっしゃい!
リチャード王子
「シモーヌすまない…ロキは私を助けようとして
竜帝とさしちがえ、竜帝とともに、底知れぬ穴に落ちていって
しまった…
「私達は、その後1週間、そこにとどまって、
ロキのそうさくをつづけたのだが…
シモーヌ
「…そうですか…。あの人は…ロキは、
最期まで、『黄金の騎士』でありつづけたんですね…
彼も、きっと本望だったと思いま…うっ!…
リチャード
「! シモーヌ、しっかり!
シモーヌ
「ステラねえさん…
ステラ
「…シモーヌ、どうしてこんなになるまで、病気を
ほうっておいたんだよ!
シモーヌ
「私が病気だと知ったら、きっとロキは、
安心して戦いに行けなかったと思うの…
私はあの人の、あしでまといにはなりたくなかった…
ステラ
「バカだよ、あんたもロキも…うう…
シモーヌ
「…ねえさん…子供達を…
ステラ
「安心しな!あんたの子供達は、あたしがちゃんと
めんどうを見てあげるよ…
シモーヌ
「…良かった、ありがとう…
ステラ
「シモーヌ!
『…うっ、いけね…うっかり寝ちまった…
『!?
『しっかりしろ!
「……
『いったい、何があったんだ!?
!!あれは!?
デュラン
『まてっ!何者だ!!
魔導師
「フフフ、なかなかカンのするどいヤツだ……
魔導師
「……フフフフ……ハハハハ
デュラン
『何がおかしい!!
魔導師
「……どうやら、おまえはこの城いちばんの、
剣のつかい手である事をほこりにしているようだが、
身のほど知らずを思い知るがいい……
デュラン
『だまれっ!!
魔導師
「フン、逃げるのか、こし抜けめ…
『ナメるなっ!
魔導師
「…ハッハッハ!まだまだ子供だな。
こんなヤツを傭兵としてやとっているようじゃ、
英雄王とやらも、うわさほどたいした王じゃなさそうだ。
デュラン
『国王陛下を悪く言う事は、許さんっ!!
魔導師
「……とどめだ…
(兵士達「城内に侵入者がいるぞ!探せ!!)
魔導師
「…ククク、命びろいしたな…今日はこれでひきあげる。
まあ、あわてなくても、こいつのようなザコ相手なら、いつでも
たやすく我らの、占領下におく事ができるだろう……
『…クッ!ま…待て……
「昨夜、城内にしんにゅうした、なぞの魔導師によって、
けいびについていた者達がやられ、生き残ったのは
デュラン一人…
「目撃者の話では、赤いマントをつけていたという…
ウワサにきいた、アルテナの「紅蓮の魔導師」に違いない!
「では、アルテナが、ふとどきにもわがフォルセナに
スパイを送りこんだというのか!ぬぅ、許せん!
向こうが攻めて来る前にこちらから全面攻撃をしかけようぞ!
騎士達
「おおっ!
英雄王
「…まあ待て。敵がアルテナという、たしかなしょうこが
あるわけではない。それになぜアルテナが、わが国に対して
攻撃をしてくるのかも、まだ明らかになっていない。
英雄王
「昨夜、誰にも気づかれずに城内にせんにゅうし、
あの、デュランでさえもかなわなかった相手…
今ヘタに動けば、敵のワナにはまるキケン性もある…
英雄王
「まず、城内の軍備をかためた上で、
アルテナのようすを調べるため、こちらからもスパイを
おくりこんでくれ!
「御意!
英雄王
「アルテナ…理の女王…なぜ、フォルセナに…
デュラン
『…ちくしょう…ちくしょう…
ウェンディ
「お兄ちゃん!まだケガが治ってないんだから
寝てなきゃだめよ!
デュラン
『…ちくしょう…紅い…紅い魔導師…
…オレは…オレは…
ウェンディ
「お兄ちゃん、しっかりして!
デュラン
『……
ウェンディ
「お兄ちゃんのよわむし!だいっきらい!
デュラン
『…ウェンディ…
「…オレのアニキも、あの夜、紅蓮の魔導師に…
ちくしょーッ!
「英雄王さまのおおさめになる、このフォルセナに攻めてくる国が
あろうとは…昔じゃ、考えられん事だ…
「デュランさん…まだのむんですか?
もうそろそろ、おやめになった方が…
「ねー、デュラン…そんな魔導師の事なんか忘れて、
ぱーっとさわぎましょうよ!……ねーってばー!
「ちょいと、あんた、さっきの女の子、あんたの妹だろ?
かわいそうに、泣きながら、帰っていったよ!
「デュラン…もうケガは平気なのか?
英雄王さまが心配されていたぞ…
しかし、おまえほどのウデでも、はがたたない相手なんて…
「困ったなあ、今夜中に東のマイアの港に行こうと
思ったのに、町の外に出られないんだもんなあ…
「先日の、スパイせんにゅうの一件いらい、
夜間のけいびが、強化された!英雄王様の命令により、
夜、町の外に出る事は、禁止されている。
「戦争が、始まるかも知れないんだって!?
ホントウなのかい?あんた傭兵なんだから、
何とかしておくれよ!
「よう、デュラン、もう平気なのか?
城はおれ達が守る。心配せずゆっくり休め。
宿屋の主人
「デュランさん…、さしでがましいようですが、
ステラさんもウェンディちゃんも、心配なさってますよ。
いいかげん、おうちに帰られた方が…
「あら、デュランちゃん、ひさしぶり!
あなたもお父さまににて、りっぱな戦士になったわねえ!
「デュランよ、よく聞け、おぬしの父、黄金の騎士のロキは
竜帝とさしちがえ死んだ。これぞまことの騎士精神!
おまえも、父にまけぬ、りっぱな戦士になるんだぞ!
(ステラ「…デュランかい?)
『……まだ…帰りたくない…
占いババ
「…人の運命は、99パーセントまで、あらかじめ
決まっておる…じゃが、残り1パーセントに、未来があり、
夢がある…人はその1パーセントをこうよぶ…『希望』と…
「何じゃ、おぬし、しけたツラしおって…
どれ、この占いババがうらなってしんぜよう!
ふ〜む……ごにょ…ごにょ…
デュラン
『うるせえ!オレは占いなんか信じねえ!
力だ!信じられるのは、力だけなんだ!
やい、ババア!どうすりゃオレは強くなれるんだ!?
占いババ
「ひーっ、何するんだよ!このらんぼうもの!
そんなに強くなりたきゃ、聖都ウェンデルへでも行きな!
光の司祭ってのが、クラスチェンジの方法を知ってるってさ!
デュラン
『…クラス…チェンジ?
占いババ
「ふん、あんたみたいなヒヨっこは、
『ひよこ戦士』にでも、クラスチェンジするんだね!
さあ、とっとと、でてっておくれよ!
デュラン
『クラスチェンジか…!
あの紅蓮の魔導師に、勝つためなら、何だって、やるぜ…
よーし、いっちょ、聖都ウェンデルまで行ってみるか…
ウェンディ
「ぅうーん、お兄ちゃん…
…ゆうしょうおめでとう…すーすー…
ステラ
「……
(デュランは、旅のしたくをととのえた…)
『…オレは、あの紅蓮の魔導師を許さない。
何があっても、必ず倒してやる…
それまでは、ここには帰れない…
『……帰らない…
『……
デュラン
『…ウェンディ、ステラおばさん…ごめん…
ステラ
「お待ち!
デュラン
『!おばさん…
ステラ
「ほら、同じブロンズソードだけど、
こっちの剣ととりかえて行きな!
デュラン
『これは!?
ステラ
「あんたの父さんが、若い頃に使っていた剣さ。
ロキもこの剣で、剣術大会にゆうしょうしたんだよ。
決勝で英雄王をやぶってね…
デュラン
『!
ステラ
「さあ、行きな。ウェンディにはあたしからちゃんと
言っておくから、後の事はだいじょうぶ。旅立つ前にお城に
よって王様にあいさつして行きなさい。お待ちになってるよ。
デュラン
『国王陛下が!?
ステラ
「ロキの息子なら、きっと旅立とうとするはずだって…
さすがだねえ…
ステラ
「まあ、あたしも、だてにあんた達の母親代わりを
してたわけじゃないから、そうなるとは思ってたけどね…
デュラン
『…おばさん、ありがとう。きっと戻ってくるよ…
「デュラン、国王様がお待ちだ!
「フォルセナを出てまっすぐ南に行けばマイアの港に出る。
そこから城塞都市ジャドへ船でわたれば、
聖都ウェンデルに行けるだろう。
「ウェンディのにいちゃん、こんちわ!
「え、えっへん、これより剣術大会を、お、おこなう!
あっ!
「…お、王様なら、奥の部屋にいるよ。
べ、べつに、さぼってたわけじゃないからな!
英雄王
「旅立つのか、デュランよ…
デュラン
『…王様!!私がふがいないばかりに、むざむざと
敵を逃がしてしまい、まことにもうしわけありません。
『…私は、あの魔導師だけは許す事ができないのです。
生まれて初めて敗北をきっしたばかりでなく、
わが国王陛下をぶじょくした、あの魔導師を…
デュラン
『私は、あの魔導師にうち勝つまでは、
この城には、戻れません…
英雄王
「そうか…わかった。気をつけて行くのだぞ!
デュラン
『ありがとうございます!
英雄王
「ふふふ、あいつ、いい目になりおった。
以前は、プライドが高すぎて心配だったのだが…
ロキの若い頃にそっくりだ…
英雄王
「気をつけて行くのだぞ!
「え、えっへん、これより剣術大会を、お、おこなう!
あっ!
「…お、王様なら、奥の部屋にいたろ?
べ、べつに、さぼってたわけじゃないからな!
デュラン
『……見てろよ……紅蓮の魔導師め!
オレは…強くなる…誰よりも強くなってやる…
……そして……必ず勝つ!……
フォルセナに現れた紅蓮の魔導師にやぶれ、自信を失いかけた
デュランであったが、いつの日にか、
あの魔導師に打ち勝つため、聖都ウェンデルへと旅立った…
だが、この時デュランは、世界の命運をかけた戦いに
やがて自分が巻き込まれて行く事など、知る由もなかった…
物語は、まだ始まったばかりなのだ…
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